世の中と演劇する The three playsⅡ

Sign of the times

3人の作家の3本の短編が、連なり重なり合い、3人の俳優によって

一つの物語へ

「演劇は面白い」

この文章を書いているのは、第一稿を書き上げてくれた作家たちと、改稿の打ち合わせをしている日だ。3人の作家の3本の作品のなんと多彩で多様なことか。
読み切れていなかった自分を恥じつつも、感動してしまっているのだ。
3人とは、俳優として、あるいは舞台監督として、あるいは演出家として、付き合ってきた。どこか感じるものがあったからこそ戯曲を依頼したのだが、こんなにも別々の作品を並べていいのか、と思ってしまうほどだ。
しかし、いいのだ。それこそが眼目ではないか。
「Sign of the times」のタイトルは、世相の意。
気がついてみると、世間というやつは、自分が思っていたものと随分違うイメージになっている。それは、もういつの間にか随分と歳をとった自分が「今の若いもんは」というのと似ているのかもしれない。しかし、窮屈になってきた、は実感である。
それは、個というものの否定かもしれない。マスク警察、というのがあったが、知り合いでもない年上の人間に、居丈高に「こんなとこでタバコ吸うなよ」という人の言葉には「世間の常識だよ」が滲んでいる気がしてならない。
その常識は、自分がタバコを好きとか嫌いとは関係なく、何かしら自分なりの考えや理屈ではなく、世間や世相を体現しているのではないか。正義とはなんだろう。SNSはいうまでもなく、正義をかざしながら、復讐や攻撃だけに堕している光景は、もう見慣れるほどだ。
と、まあ、最初の打ち合わせでは、そんなことを作家たちと話したのだ。
だけど、堕しているのは自分かもしれない、という恐れを持つのも作家。「揺れ」るのも人間。そして、恐れも揺れも人それぞれだ。
演劇に最も必要なものは、多様性ではないか、そんなことまで最近思う。

その作品に向かい合う、僕ら俳優も多様だろう。
3本の作品に3人のそれぞれの個性が向かい合う様は、丸尾と江花姉妹のさまざまな面を舞台に晒していくことになるだろう。

うん、いいんだな。こんなことやって。演劇は面白い。

これから本番までが楽しみでならない。
みなさんもどうか楽しみにしてください。

劇場で、配信で会いましょう。

総合演出・構成台本　丸尾聡

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